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令和元年7月に当院の結核病棟におきまして、多剤耐性アシネトバクターが複数の患者様から分離されました。最初の検出は2年前で、以降本館5階病棟17名、6階病棟2名の計19名の患者様におきましてこの菌が検出されております。

アシネトバクターについて
アシネトバクターはグラム陰性桿菌一種で、土壌の中など自然環境に広く分布し、ニューキノロン系、アミノグリコシド系、カルバペネム系の抗菌薬に抵抗性のものを多剤耐性アシネトバクターと言います。本菌は健常な方にはまず感染しませんが、種々の疾患で寝たきりの病弱な患者様には時に感染し痰や褥瘡から検出されたりします。多くは単に検出されるだけの保菌状態に終始しますが、重篤な状態に陥っている方では肺炎などを来たし病状を悪化させることがあります(国立感染症研究所感染症情報センター)。

四條畷保健所に届け出る一方、地域の感染管理者、大阪府、ならびに大阪大学感染制御部からなる対策会議を立ち上げ、各位のご指導を受けつつ8月以降調査と改善に努力して参りました。

まず患者様およびご家族の方に対しましては、多剤耐性アシネトバクターが検出された時点で「保菌状態に留まっていますが、念のため感染隔離が必要です」とお伝えし、ご理解を得ております。その後19名のうち18名の方は、すでにお亡くなりになっておられます。この菌の感染が患者様の病状経過にどのような影響を及ぼしたか外部の専門医2名に検討していただきました。その結果、「1例では肺炎を悪化させ直接死因となった可能性が否定できないが、他の17例ではすべて保菌状態に留まっており、病状経過には悪影響を及ぼしておらず死因との因果関係は認められない」との結論をいただいております。なお肺炎が悪化した可能性のある患者様のご家族には、病状経過を説明しご納得を頂きました。

一方対策につきましては、8月以降新たな結核入院を4階病棟のみに限定する一方、5階病棟と6階病棟の清掃と消毒に努めました。また全職員が一丸となって、感染予防策の徹底および抗生物質使用の適正化に取り組んでおります。その結果、5階病棟および6階病棟では、病室、ベッドやトイレなど病棟環境から多剤耐性アシネトバクターは検出されず、患者様におきましても新たな多剤耐性アシネトバクターの検出例は出現してはおりません。

今後も引き続き徹底した感染対策を行う一方、新たな多剤耐性アシネトバクター感染が出現しないか検査を続けて参ります。検査は定期的な結核菌検査と同時に行いますので、患者様には新たなご負担をおかけすることはございません。

亡くなられた患者様には心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、当院の患者様および地域の皆様にはご心配をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。安全かつ安心な医療に向けて職員一同いっそうの努力を払い、地域医療の向上に貢献して参る所存です。今後もご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

令和元年10月

医療法人仁泉会阪奈病院

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