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多剤耐性アシネトバクターと多剤耐性緑膿菌

令和元年10月16日以来、本ホームページにおきまして当院結核病棟の本館5階病棟ならびに6階病棟での多剤耐性アシネトバクター院内感染についてご報告申し上げて参りました。第3報で述べましたように、11月12日の拡大感染対策委員会において感染予防対策の充実とその自己評価、および患者様の感染状況モニタリングを続けることを条件に、本館5階病棟および6階病棟の入院再開が了承されました。それを受けまして、この2つの病棟では患者様やご家族の方々にこれまでの経緯をご説明しご納得いただいた上で、慎重に結核患者様の入院を再開しております。

11月末に実施いたしました5階および6階病棟にご入院中の45名の患者様の喀痰培養検査では、8月末、9月末、10月末に引き続いて多剤耐性アシネトバクターの新規発生は検出されませんでした。第1報の段階で保菌が確認された1名の多剤耐性アシネトバクター陽性患者様も、9月以降は培養陰性が続いており、臨床的に除菌されたと判断しております。

第2報でも報告いたしましたように、本館5階病棟では本年7月に2剤耐性緑膿菌の院内感染が発生いたしました。感染を受けた患者様の中には経過中に2剤耐性が7月に3剤耐性(多剤耐性)に変異する場合がございましたが、他の患者様におきましては逆の現象も見られております。このことから、当院で院内感染として広まった緑膿菌の薬剤耐性、とくにアミノグリコシド系抗菌薬に対する耐性は遺伝子変異に基づく固定的なものではなく、抗菌薬のオン/オフで容易に変動するきわめて流動的なものであると思われます。したがって、この事実が判明した以降当院では、院内感染対策の徹底を図る一方で、抗菌薬治療の適正化につきましても一層の努力を続けて参りました。

その結果、各病棟での感染予防対策推進効果とも相まって、新規の緑膿菌院内検出件数は有意の減少を維持できております。とくに多剤耐性緑膿菌(MDRP)につきましては、8月から9月にかけて一過性に多剤耐性を示す1件がございましたが、10月以降11月末の時点でMDRPが検出された患者様はおられません。

以上、ご報告申し上げます。今後もご入院中の患者様には引き続き多剤耐性アシネトバクターおよび緑膿菌等の感染モニタリングを続行しつつ、院内感染対策の徹底を推進し、大阪府の結核医療ならびに地域医療に貢献いたしたいと考えております。皆様におかれましては、引き続きご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

令和元年12月

医療法人仁泉会阪奈病院

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