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令和元年10月17日に多剤耐性アシネトバクター院内感染に関しまして報道各社にご報告致しましたが、その中で「2剤耐性緑膿菌に関する院内感染を調査していました際に、患者様に多剤耐性アシネトバクター院内感染を検出した」旨述べました。本報告では、2剤耐性緑膿菌の院内感染につきまして、報告させて頂きます。

緑膿菌について

緑膿菌はグラム陰性桿菌の一種で、水回りなど生活環境に広く分布し、健常者には毒性を示さない弱毒菌です。ペニシリン系やセフェム系などの抗生物質に自然耐性を示し、抗生物質の多用により耐性度が増していきます。ニューキノロン系、カルバペネム系およびアミノグリコシド系薬剤の3剤に耐性を獲得した場合多剤耐性緑膿菌と呼ばれ、院内感染対策上警戒すべき微生物の一つとなります。本細菌は健常な方にはまず感染しませんが、種々の疾患で寝たきりの病弱な患者様にはいわゆる日和見感染をきたし、病原性を発揮します。(国立感染症研究所)。

令和元年7月5階病棟では7名の患者様から2剤耐性緑膿菌が検出されておりました。ご家族にはその旨お伝えし、感染予防にご協力を頂いた次第です。院内感染を疑い、7月に5階病棟での緑膿菌保菌患者様6名(1名は転院されました)から菌を採取し菌の核酸DNA電気泳動を行いました。

その結果、3名および2名の同一泳動パターングループが認められました。3名のグループでは菌の検出時期から見て1名の患者様から2名の患者様に感染したことが判明しました。また別の2名のグループでも、検出時期の差から1名の被感染患者様を判定致しました。残りの1名の患者様の泳動パターンは、どなたのものとも一致しませんでした。この患者様および2つのグループで最初に2剤耐性緑膿菌が検出された患者様に関しましても、以前に他の患者様から院内感染を受けた可能性は否定できませんが、以上の経過を四條畷保健所に相談する一方、地域の感染管理者ならびに大阪大学感染制御部からなる対策会議を8月20日に立ち上げ、各位のご指導を受けつつ調査と改善に努力して参りました。

6名の患者様に関しましては本菌の感染がどのように影響したか、さらなる検討を行っているところです。詳細につきましては、現時点では個人情報に配慮して控えさせて頂きます。

5階病棟の環境調査では、器具洗い場のシンクの一つから2剤耐性緑膿菌が検出され、電気泳動上3名の患者様グループの菌と同等でした。このことは、2剤耐性緑膿菌院内感染の一部は医療器具によって伝搬された可能性があることを示唆しています。対策としましては、5階病棟に限らず全病棟で部屋や器具の清掃と消毒に努めつつ、また全職員が一丸となって感染予防策の徹底および抗生物質使用の適正化への取り組みを開始しました。その結果、5階病棟では、吸引器、洗い場やトイレなど病棟環境から緑膿菌は検出されておりません。患者様におきましても新規の2剤耐性緑膿菌検出例が減少してきているのか、慎重に検討を加えて参ります。

当院の患者様および地域の皆様にはご心配をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。安全かつ安心な医療に向けて職員一同いっそうの努力を払い、地域医療の向上に貢献して参る所存です。今後もご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

令和元年10月

医療法人仁泉会阪奈病院

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